28歳|🇫🇮 フィンランド|RW|無制限FA

ドラフト1巡目・全体2位。19歳のNHL2年目に44ゴール、得点ランキング2位。

それほどの選手が、なぜ28歳で所属先を失ったのか。

カナディアンズ公式。2024年、新天地のユニフォームに袖を通したライネ。ここから、世界選手権MVPとドラフト全体2位をつかんだ18歳まで時計を戻す。

18歳で世界選手権MVP。ドラフト全体2位へ

2016年、18歳のパトリック・ライネは、ドラフト前から自分のシュートに強い自信を示していた。最大の武器は、「レーザービーム」と形容された強烈なシュートだった。

NHLコンバインで「🇺🇸マシューズより自分のほうが良いシュートを持っている」と語り、5年後には憧れの🇷🇺アレクサンダー・オベチキンほどの選手になりたいと話した。18歳だった。

その自信には根拠があった。フィンランドで開催された世界ジュニアで金メダルと7ゴール。タッパラではリーガ優勝とプレーオフMVP。世界選手権でも7ゴールを決め、18歳で大会MVPに選ばれた。

IIHF公式。金メダルには届かなかったが、18歳で大会MVPと最優秀FWに選ばれた。

2016年ドラフト。トロント・メイプルリーフスが🇺🇸オースティン・マシューズを1位指名した後、ウィニペグ・ジェッツは🇫🇮ライネを2位で指名した。

Sportsnet公式。2016年ドラフト全体2位。ウィニペグが次代の得点源としてライネを指名した瞬間。

ルーキーシーズンは36ゴール。19歳で迎えた2年目は44ゴールを決め、リーグ最多得点者に贈られるロケット・リシャール・トロフィー争いで、オベチキンに次ぐNHL2位になった。左サークルからのワンタイマーは、NHLで最も恐れられるシュートの一つになった。

同じ2016年ドラフト組は、10年後どうなったのか

ライネの現在を理解するには、同じ年に指名された選手との比較が欠かせない。2016年組からは、得点王、スタンレーカップ優勝の中心選手、ノリス・トロフィー受賞DFまで生まれた。19歳で44ゴールを決めた時点では、ライネがこの豊作世代の先頭を走っていた。

選手・2016年指名順位・現在の所属現在どんな選手か
オーストン・マシューズ
全体1位
トロント・メイプルリーフス #34|🇺🇸
リーグ最高峰のCF。球団の中心
得点王3回、ハート賞。同期最多428ゴール
パトリック・ライネ
全体2位
未契約|🇫🇮(直近#92)
PPの得点力は残るが、現在は所属先なし
19歳で44ゴール。同期4位の通算224ゴール
マシュー・カチャック
全体6位
フロリダ・パンサーズ #19|🇺🇸
優勝チームの核となるトップ6・FW
スタンレーカップ2回。同期2位の670ポイント
クレイトン・ケラー
全体7位
ユタ・マンモス #9|🇺🇸
攻撃を作るファーストラインの主力
4季連続75ポイント以上。2025-26は88ポイント
ミハイル・セルガチェフ
全体9位
ユタ・マンモス #98|🇷🇺
攻守を担うトップペアDF
スタンレーカップ2回。2025-26は59ポイント
チャーリー・マカヴォイ
全体14位
ボストン・ブルーインズ #73|🇺🇸
長時間起用されるトップペアDF
2025-26は自己最多61ポイント
ヤコブ・チクラン
全体16位
ワシントン・キャピタルズ #6|🇨🇦/🇺🇸
得点力を持つトップ4・DF
2025-26はDF最多の26ゴール
テイジ・トンプソン
全体26位
バッファロー・セイバーズ #72|🇺🇸
得点源となるファーストラインCF
直近4季で3度の40ゴール
ジョーダン・カイロウ
全体35位
ワシントン・キャピタルズ #25|🇨🇦
スピードを生かすトップ6・RW
3季連続30ゴール。2026年にワシントンへ移籍
アレックス・デブリンキャット
全体39位
デトロイト・レッドウィングス #93|🇺🇸
継続して得点を任されるトップ6・FW
40ゴールを3度。同期2位の通算294ゴール
アダム・フォックス
全体66位
ニューヨーク・レンジャーズ #23|🇺🇸
リーグ最高峰の攻撃型DF
ノリス・トロフィー。5季連続50ポイント
ブランドン・ヘーゲル
全体159位
タンパベイ・ライトニング #38|🇨🇦
上位ラインを担う攻守両面の主力
直近4季で3度の30ゴール
イェスパー・ブラット
全体162位
ニュージャージー・デビルズ #63|🇸🇪
攻撃の核となるトップ6・FW
5季連続20ゴール、70ポイント以上

※現所属と背番号は2026年9月2日時点。チクランは米国生まれで、国際大会ではカナダ代表としてプレーしているため両方を併記した。CF=センター、トップ6=FW上位2ライン、トップ4=DF上位2ペア。

この表が示すのは、2016年組が弱い世代だったわけではないことだ。全体26位のトンプソンは40ゴール級へ成長し、3巡目のフォックスは最優秀DF、6巡目のヘーゲルとブラットも上位ラインの主力になった。ライネは早く完成した。しかし、同世代が健康、役割、チームへの適応を積み上げる間に、その差を保てなかった。

映像で比較する――19歳は5対5でも、26歳はPP中心

同じ「強烈なシュート」でも、ゴールが生まれる状況は変わった。数字だけでは見えにくい違いを、2本の公式映像で見比べてほしい。

2017-18|19歳・44ゴール

レンジャーズ戦の3得点。最初の2点は5対5、3点目はエンプティネット。PPだけでなく、5対5でも複数の得点を生み出していた時期が見える。

2024-25|26歳・20ゴール

モントリオールでの全20ゴール。このうち15点がPP、5対5は3点。左サークルからの一撃は残っているが、PPの配置から味方の供給を受ける場面が繰り返し出てくる。

見るべきなのはシュートの速さだけではない。パックを持っていない時にどこへ入り、5対5で何種類の攻撃に参加し、誰がシュートまで運んでいるか。 19歳と26歳の差は、ゴール数以上にそこへ表れている。

10シーズンを1枚で見る

数字は一直線に落ちたわけではない。所属チーム、成績、チーム編成で使う固定キャップヒットを同じ表に並べると、ライネの評価が変わった理由が見えやすい。

シーズン(開幕時年齢)所属出場/G-A-P・ゴール内訳固定キャップヒット
2016-17(18歳)WPG73/36-28-64
5対5:21|PP:9
92.5万ドル(約1.5億円)
2017-18(19歳)WPG82/44-26-70
5対5:22|PP:20
92.5万ドル(約1.5億円)
2018-19(20歳)WPG82/30-20-50
5対5:13|PP:15
92.5万ドル(約1.5億円)
2019-20(21歳)WPG68/28-35-63
5対5:15|PP:8
675万ドル(約10.8億円)
2020-21(22歳)WPG/CBJ46/12-12-24
5対5:5|PP:4
675万ドル(約10.8億円)
2021-22(23歳)CBJ56/26-30-56
5対5:14|PP:5
750万ドル(約12.0億円)
2022-23(24歳)CBJ55/22-30-52
5対5:13|PP:8
870万ドル(約13.9億円)
2023-24(25歳)CBJ18/6-3-9
5対5:3|PP:1
870万ドル(約13.9億円)
2024-25(26歳)MTL52/20-13-33
5対5:3|PP:15
870万ドル(約13.9億円)
2025-26(27歳)MTL5/0-1-1
5対5:0|PP:0
870万ドル(約13.9億円)

※WPG=ウィニペグ、CBJ=コロンバス、MTL=モントリオール。日本円は1ドル=160円で概算。最初の3季は出来高を除く固定キャップヒットで、達成条件に応じた最大265万ドルのパフォーマンスボーナスが別に設定されていた。5対5の得点数はThe Stanley Cap掲載の5対5出場時間とG/60から整数換算。ゴール内訳の残りは、4対4、3対3など5対5とPP以外の状況での得点。

キャリア224ゴールの内訳は、5対5が109ゴール(48.7%)、PPが85ゴール(37.9%)。キャリア全体でも約4割をPPで決めている。特に2024-25は20ゴール中、5対5が3ゴール、PPが15ゴールだった。一方、44ゴールを記録した2017-18は5対5で22ゴール、PPで20ゴール。若い頃はPPだけの得点源ではなかったが、モントリオールではPPへの依存が急激に高まった。

表から分かるのは、得点力が消えてから高額契約を得たわけではないことだ。2021-22は56試合56ポイント、翌季も55試合52ポイント。出場できた試合では、ほぼ1試合1ポイントを残していた。 問題は、その価値を82試合で組み込めなくなったことにある。

それから10年。2026年9月1日現在、28歳のライネには所属チームがない。

なぜ、NHL2位の得点力が未契約まで落ちたのか

理由を先に整理すると、シュート力が突然消えたからではない。NHLのGMが選手を見る順番で、別の問題が大きくなったからだ。

GMが見るものライネに起きたこと評価への影響
出場できるか直近5季の出場率45.4%1シーズンを任せにくい
通常時にも使えるか2024-25の20ゴール中15ゴールがパワープレー5対5で与えられる役割が狭い。
ロースター1枠に値するか高額契約、長期離脱、限られた起用法安くても契約を保証しにくい

これは、けがが続いた選手の年表だけではない。NHLでスターの市場価値が「過去の得点」から「82試合で何を任せられるか」へ変わっていく過程である。

ビフォー/アフター――同じカンファレンス決勝でも、立場は逆

比較2017-18 ウィニペグ2025-26 モントリオール
ライネ個人82試合44ゴール、NHL2位5試合0ゴール1アシスト
固定キャップヒット92.5万ドル(約1.5億円)870万ドル(約13.9億円)
周囲の主力ウィーラー91P、エーラース、シェイフリー、バフリンスズキ101P、コーフィールド51G、ハトソン78P、デミドフ62P※
チーム52勝114ポイント、リーグ2位の273得点若手中心の攻撃でイースタン・カンファレンス決勝進出
ライネの立場得点源として勝利に組み込まれた不在でも勝つラインナップが完成した

※モントリオールの個人成績は、NHL公式データによる2025-26レギュラーシーズン最終記録。

2017-18のウィニペグも、2025-26のモントリオールもカンファレンス決勝まで進んだ。しかし、前者ではライネが44ゴールを供給した。後者はライネが5試合で離脱した後に勝ち上がった。同じ「強いチーム」でも、ライネが必要とされた度合いは正反対だった。

ラインメートの変化も、役割の変化を映す

時期NHL公式で確認できるFWライン何が見えるか
2017-18 WPGエーラース-リトル-ライネスピードと運搬を担うエーラース、中央を支えるリトルと組んだ得点ライン
2024-25 MTL復帰戦スラフコフスキー-ダック-ライネサイズとスキルを集めたセカンドラインとして再起を託された
2025-26 最終出場時ライネ-エバンス-アンダーソン得点専任ではなく、より限定された役割で起用された

これはシーズン全体の「最多ライン」を示す表ではなく、各時点のNHL/球団公式ラインナップによる比較である。それでも、若い頃のライネが誰と一緒に攻撃を作り、最後にはどこへ配置されたかという変化は見える。

さらに2017-18のウィニペグは、ライネ一人のチームではなかった。主将ウィーラーは91ポイント、GKヘレバイクはリーグ最多タイの44勝。パワープレーにはシェイフリー、ウィーラー、バフリン、コナーが並び、チーム全体で相手の守備を崩していた。ライネのワンタイマーは個人技だったが、その一発を打てる状況は5人で作っていた。

理由1:シュートは残った。試合が消えた

直近5シーズンで、所属チームが戦ったレギュラーシーズン410試合のうち、ライネの出場は186試合だった。出場率45.4%。半分以上の224試合を欠いた。

それでも186試合で74ゴール。82試合換算では約33ゴールになる。ゴールを決める能力が完全に消えた数字ではない。問題は得点力より、その得点力をラインナップに置き続けられないことだ。

シーズン出場ゴールポイント
2021-22562656
2022-23552252
2023-241869
2024-25522033
2025-26501
5年間合計18674151

2024-25シーズンは、左膝のけがで開幕24試合を欠場しながら、52試合20ゴール。そのうち15ゴールが、相手より1人多い状況で攻めるパワープレーだった。シュートは今も武器である。一方、20ゴールの75%がパワープレーという数字は、5対5の通常時にどこまで価値を出せるかという別の問いも生む。

TSN公式。2024年プレシーズンに左膝を負傷した直後、本人が感情と治療方針を説明した。

翌2025-26シーズンは5試合1アシスト。10月16日のナッシュビル戦を最後に、体幹部のけがで手術を受けた。当初の離脱見込みは3〜4か月。シーズン終盤にはメディカルクリアが出て練習を続けたが、プレーオフのラインナップには戻らなかった。

モントリオールはそのままイースタン・カンファレンス・ファイナルまで進んだ。GMのケント・ヒューズは、長期離脱でゲーム感覚が戻っていない一方、チームは絶対に勝たなければならない状況だったと説明している。それでもヒューズは、ライネのチームメートとしての姿勢を高く評価した。

ここで切り分ける必要がある。ライネが人間的に信頼を失ったわけではない。勝っているチームのラインナップを変える理由を、彼は示せなかった。

カナディアンズを追う記者も、ライネがラインナップの選択肢になっていない状況を取り上げた。問題は知名度ではなく、いま誰を外して入れるかだった。

理由2:870万ドルのスターが「ロースターの負担」に変わった

2021年1月、ウィニペグはライネとジャック・ロスロビッチをコロンバスへ送り、ピエール=リュック・デュボワを獲得した。オフの時点で、ライネの代理人はトレードが最善かもしれないと示唆していた。

コロンバスでは2022年7月、4年総額3,480万ドル、年平均870万ドルの契約を結んだ。1ドル=160円の概算で、年平均約13億9,000万円である。当時のコロンバスは、彼を「エリートのゴールスコアラー」と評価していた。

その契約期間に、評価軸は変わった。ゴール数だけではなく、健康状態、5対5で与えられる役割、チームのシステムとの適合まで問われるようになった。

2023-24シーズンは、鎖骨骨折などで18試合の出場にとどまった。2024年1月には、自らのメンタルヘルスを優先するため、NHLとNHLPAのプレーヤー・アシスタンス・プログラムを利用した。この利用自体を、選手としての評価低下の原因と結びつけるべきではない。

TSN公式。プログラム利用後の2024年8月、ライネは苦しい1年を通じた自分自身の変化を語った。

2024年8月、コロンバスはライネと2026年の2巡目指名権をモントリオールへ送り、DFジョーダン・ハリスを獲得した。コロンバスのドン・ワデルGMは、ライネが環境の変化を望んだことと、クラブが財務的な柔軟性を重視したことを話している。

NHL Network公式。ライネと2巡目指名権がモントリオールへ、ジョーダン・ハリスがコロンバスへ動いたトレードを分析している。

870万ドルの契約を持つスターを出すため、送る側がドラフト指名権まで付けた。普通は有力選手を獲得する側が指名権を渡す。ライネのトレードは逆だった。これは市場価値が「何ゴール決められるか」だけではなく、年俸、健康、ロースターを動かす難しさまで含めて判断されるようになった転換点である。

NHL公式Instagram。2024年12月3日、354日ぶりの公式戦でカナディアンズのラインナップに戻った。

理由3:安くても、23人の1枠を任せられるのか?

2026年8月14日、アイランダースを取材するステフェン・ロスナーは、フリーエージェント市場の初日にクラブがライネ側と話したと報告した。ただし、クラブはPTO(プロフェッショナル・トライアウト)以上を提示する意向はなかったと、彼は理解している。

理由は、キャップヒットだけではない。ロスナーは、ライネがパワープレーの強みがある一方、弱点の自陣でのプレー(守備)とピート・デボアHCのシステムへの適合性に疑問を示した。アイランダースにはすでにFWが多く、若手も枠を争っている。

つまり、ライネの問題は「最低年俸なら安いか」ではない。NHLでは原則として最大23人のロースターでシーズンを戦う。その1枠、パワープレーの出場時間、5対5でのFWの組み合わせを、彼のために使う価値があるか。 GMが買うのは、過去の44ゴールではなく、今のラインナップに置ける役割である。

NHLの労使協定では、400試合以上出場し、直前の契約最終年に100日以上、負傷者リスト(IR)に入った選手は、1年契約に出来高払いを組み込める。ライネがIR日数の要件を正式に満たす場合、基本給を抑え、出場数などの達成に応じて支払う構造が現実的になる。

スターの契約額が上がり、優勝を狙うチームほどキャップの余白が少ない。その環境で、安い契約のライネは一見魅力的に見える。それでも契約が決まらないのは、年俸よりも、健康と役割で戦力として計算しにくいからだ。

18歳の比較は、28歳で逆向きになった

18歳のライネに向けられた問いは、「マシューズとオベチキンのどこまで近づけるか」だった。

28歳のいま、問われているのは、「彼を23人の中に入れると、チームは強くなるか」である。

ライネはモントリオールでの最後の日、「来季はどこへ行くか楽しみだ」と話した。本人は、まだ終わったとは考えていない。

本人Instagram。「To be continued」。続きを決めるのは、次の契約ではなく次の出場機会になる。

リーグの判断は、もっと冷静である。シュートは評価する。しかし、そのシュートが必要になる日まで、ロースターの枠を空けて待ってはくれない。

ライネの才能は死んでいない。しかし、待ってくれる時間は消えた。

終わったと書くのはまだ早い。ただし、復活への道は険しい。安い1年契約かPTOから始め、健康であること、5対5で使えること、パワープレーでもう一度違いを作れることを、順番に証明しなければならない。

10年前、ライネは自分がどこまで大きくなれるかの未来の話していた。

しかし、いまは、シュート以外でのピースが見つけにくい。\もう一度、輝く瞬間をみたい。\本気で、もがき、苦しんだ先には、あたらしい世界が見えてくると信じている。

※契約状況と成績は2026年9月1日時点。日本円は1ドル=160円で概算。パフォーマンスボーナスの可否と条件は、実際の契約登録と労使協定による。

主な参照先